事例紹介

併合14級の神経障害で,10年間9%の労働能力の喪失を認められ,金365万円増額




1 事案の概要

依頼者は,自動車の助手席に乗車中,加害自動車に追突され,頸部捻挫及び腰部捻挫等の傷害を負いました。 
依頼者は,事故後約1年経っても,頸部と腰部に強い痛みが残存していました。
 

2 訴訟前の交渉

(1) 後遺障害等級の認定

当事務所は,主治医と面談し,依頼者の症状や他覚的所見を確認したうえで,確認した症状や他覚的所見を後遺障害診断書に記載してもらいました。
その結果,依頼者は,自賠責保険の事前認定において,この頸部痛と腰部痛について,それぞれ局部に神経症状を残すものとして,後遺障害等級14級9号に該当し,この2つを併合した結果,後遺障害等級併合14級に該当すると認定されました。

(2) 相手方保険会社からの提示

依頼者は,相手方保険会社から,次のとおり,金640万9324円の損害賠償の提示を受けました。
後遺障害逸失利益
​→金33万5734円
(基礎収入金246万5980円×労働能力喪失率5%×労働能力喪失期間3年のライプニッツ係数2.723)
合計 金640万9324円
(うち既払金421万5731円)

これを受け,当事務所は,相手方保険会社と交渉しましたが,相手方保険会社は,労働能力喪失率について,5%を上回ることはなく,労働能力喪失期間について,譲っても5年を上回ることはないとして,大幅な増額を認めることはありませんでした。
そこで,当事務所は,訴訟を提起するに至りました。

3 訴訟の結果

当事務所は,依頼者が,2箇所に後遺障害等級14級に該当する後遺障害が残存しており,1箇所に後遺障害等級14級に該当する後遺障害が残存している場合に比べて,労働能力の喪失の程度が大きいことを主張立証ました。
また,当事務所は,依頼者について,本件事故により激しい衝撃を受け,通常のむち打ちよりも重い症状を残しており,現実に労働への影響も大きいことも,併せて主張立証しました。
第1審は,依頼者の症状が,通常のむち打ちの場合に比して,重いこと認め,10年間にわたって,労働能力を9%喪失していると認めました。
第1審は,次のとおり,後遺障害逸失利益を金242万4691円認め,合計金1006万8467円の支払を命じる判決を言い渡しました。
後遺障害逸失利益
→金242万4691円

(基礎収入金348万9000円×労働能力喪失率9%×労働能力喪失期間10年のライプニッツ係数7.7217)
合計 金1006万8497円
(うち弁護士費用金42万円,確定遅延損害金127万円既払金421万5731円)

4 本事例の意義

労働能力喪失率は,実務上,後遺障害等級に応じて,認定されるのが一般的です。 
労働能力喪失期間も,実務上,むち打ち症の場合,後遺障害等級に応じて認定されるのが一般的です。
そして,後遺障害等級は,後遺障害等級14級に該当する後遺障害が複数ある場合も,等級の繰上げはなく,後遺障害等級併合14級とされています。
そのため,労働能力喪失率と労働能力喪失期間は,複数の箇所に後遺障害等級14級に該当する後遺障害が残存している場合であっても,1箇所に後遺障害等級14級に該当する後遺障害が残存している場合と同じ(労働能力喪失率5%,労働能力喪失期間3~5年)と判断されるのが一般的です。
そのような中,本事例は,2箇所に後遺障害等級14級に該当する後遺障害が残存している場合について,10年間にわたって,労働能力の喪失が9%認められたことに意義が認められます。
その結果,本事例は,訴訟において,合計金1006万8497円が認められ,14級の後遺障害を残す依頼者に高額の損害賠償金が認められたことにも,大きな意義が認められます。
本事例は,その意義が認められ,交通事故訴訟専門の判例集や実務で一般的に参照される赤い本においても紹介されています(福岡地裁平成26年2月13日判決・自保ジ1920号56頁)。

以上

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